
暑い季節が近づくと、セキセイインコにとっての夏の適温やエアコン管理に関する悩みが増えてきますね。日本の夏は高温多湿で、特に夜の冷え込みや留守番中の室温管理、万が一のエアコンなしの状況など、心配事は尽きません。28度という設定温度が本当に安全なのか、湿度はどのくらいがベストなのか、迷ってしまう飼い主さんも多いのではないでしょうか。
記事のポイント
- 夏のセキセイインコにとって快適な温度と湿度の具体的な数値目安
- 冷房や除湿機能を使ったエアコンの正しい設定方法と風向きの工夫
- 寝るときや留守番中における安全な環境づくりのポイント
- 停電時やエアコン故障時に役立つ緊急時の暑さ対策テクニック
夏のセキセイインコの適温と基本の飼育環境
まずは、セキセイインコが健康に過ごすための基本的な温度と湿度の基準についてお話しします。私たち人間とは少し違う彼らの感覚を理解して、快適な夏のお部屋を作ってあげましょう。
夏のエアコン設定温度と風向きの調整

セキセイインコの飼育本や獣医師のアドバイスを見ると、一般的に推奨される適温は20℃~28℃という範囲が示されています。しかし、これを単純に「エアコンの設定温度を26℃にしておけばOK」と捉えるのは少し早計かもしれません。なぜなら、私たち人間とインコとでは、「快適」と感じる生理的な基準が根本的に異なるからです。
まず理解しておきたいのは、セキセイインコの平均体温は40℃~42℃と、人間よりもかなり高いということです。私たち人間にとって「涼しくて汗が引く」と感じる25℃前後の室温は、体重がわずか30g~40gしかない小さなインコにとっては、体温を奪われやすい「肌寒い環境」になり得ます。そのため、私が普段心がけている基準は、「人間が薄着で過ごして少し汗ばむくらい、または人間にとって快適な温度+1℃」という設定です。具体的には、エアコンの設定温度を27℃~28℃に設定し、室温計が28℃前後を指している状態をキープするようにしています。
さらに重要なのが「風向き」と「気流」のマネジメントです。皆さんも経験があると思いますが、扇風機の風に当たり続けると体がだるくなりませんか?インコにとって「エアコンの直風」は、まさに命取りになる危険な要素です。彼らの体は羽毛という優れた断熱材で覆われていますが、風が当たると羽毛がめくれて地肌に直接冷気が触れ、断熱層(空気の層)が破壊されてしまいます。これにより、急速に体温が奪われ、夏場であっても低体温症や風邪、最悪の場合は落鳥(死亡)につながるリスクがあるのです。
エアコンの風向き設定の鉄則

エアコンを使用する際は、以下のポイントを徹底してください。
- 風向きは「水平」または「上向き」に固定:冷たい空気は重いため、自然に下へと降りてきます。天井付近に向けて風を送ることで、部屋全体を包み込むように優しく冷やすことができます。
- スイング機能はOFFにする:スイング機能を使うと、一時的であってもケージに風が当たる瞬間が生まれてしまいます。一定のリズムで温度変化が起きることもストレスになるため、風向きは固定が原則です。
- サーキュレーターの活用:エアコンの対角線上にサーキュレーターを設置し、壁や天井に向けて空気を撹拌(かくはん)させることで、部屋の温度ムラをなくし、効率よく適温を維持できます。
【絶対NG】ケージへの直風
たとえ設定温度が30℃であっても、エアコンや扇風機の風が直接ケージに当たる配置は絶対に避けてください。ケージの設置場所は、エアコンの吹出口から最も遠く、風が回ってこない「無風地帯」がベストです。
適正湿度の目安と除湿の重要性

日本の夏において、温度管理と同じくらい、いえ、時にはそれ以上に生命に関わるのが「湿度管理」です。多くの飼い主さんが温度には敏感ですが、湿度計の数値には意外と無頓着なケースが見受けられます。しかし、セキセイインコの体温調節メカニズムを考えると、湿度のコントロールこそが熱中症予防の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
人間は暑いと汗をかき、その汗が蒸発する時の「気化熱」で体温を下げます。対して、セキセイインコには汗腺がありません。その代わりに彼らが行うのが、口を開けてハァハァと呼吸する「パンティング(開口呼吸)」です。呼吸器の湿った粘膜に空気を通過させ、水分を蒸発させることで血液を冷やしているのです。この仕組みは、湿度が低い環境であれば効率よく機能しますが、湿度が高い日本の夏ではどうなるでしょうか?
湿度が70%~80%を超えるような高湿度の環境では、空気中にすでに水分が飽和しているため、インコがいくらパンティングをしても水分が蒸発してくれません。つまり、冷却システムが機能不全に陥ってしまうのです。この状態だと、室温がそれほど高くなくても(例えば28℃程度でも)、体内に熱がこもって熱中症を発症するリスクが跳ね上がります。
理想的な湿度の目安は50%~60%です。これより低すぎると(40%以下)、鼻や喉の粘膜が乾燥して感染症にかかりやすくなったり、脱水症状を起こしやすくなったりします。逆に高すぎるとカビや細菌が繁殖しやすくなり、衛生面でも問題が生じます。
エアコンの機能使い分け術

私は、温湿度計を見ながらエアコンの運転モードを以下のように使い分けています。
| 状況 | 推奨モード | 理由・解説 |
|---|---|---|
| 真夏日(気温35℃以上) | 冷房運転 | とにかく室温を下げることが最優先。設定温度は27~28℃。 |
| 梅雨時・雨の日 | 除湿(ドライ) ※再熱除湿が理想 | 気温はそこまで高くないが湿度が不快な時。室温を下げすぎずに湿度だけ下げる「再熱除湿」機能があればベスト。 |
| 夜間・熱帯夜 | 弱冷房除湿 or 高めの冷房 | 冷えすぎを防ぎつつ、快適な湿度を保つため。 |
除湿剤の併用もおすすめ
クローゼット用の除湿剤などをケージの近く(インコが触れない場所)に置くのも、局所的な湿度対策として有効です。ただし、誤食事故には十分注意してください。
雛や老鳥に安全な温度範囲

ここまで「一般的な成鳥」の適温についてお話ししましたが、インコの年齢やライフステージ、健康状態によって、求められる温度環境は劇的に変化します。「適温」という言葉をひとくくりにせず、愛鳥の現在の状態に合わせたオーダーメイドの温度管理が必要です。
特に注意が必要なのが、生後数ヶ月以内の「雛(ひな)」と、7歳を超えた「老鳥(シニア)」です。彼らに共通しているのは、「自力で体温を維持する能力が低い」という点です。
雛(ひな)・幼鳥の場合
羽が生えそろっていない雛は、裸同然の状態ですから保温性が皆無です。また、成長のために莫大なエネルギーを使っている時期なので、寒さで体温維持にエネルギーを奪われると、成長不良や食滞(消化不良)、免疫不全を起こしてしまいます。一人餌になる前後の幼鳥であっても、成鳥に比べれば筋肉量が少なく代謝も未熟です。
そのため、雛や幼鳥がいる場合は、夏場であっても28℃~30℃程度の暖かい環境を維持するのが基本です。冷房が効いた部屋では、ケージの周りをアクリルケースやビニールカバーで囲い、部分的にヒーターを使うなどの工夫が必要になることもあります。
老鳥(シニア)の場合
人間と同じく、インコも年を取ると代謝が落ち、筋肉量が減って体温が上がりにくくなります。また、関節炎などの持病がある場合、冷えによって痛みが増すこともあります。若い頃は平気だった25℃の環境でも、老鳥になると寒くて膨らんでしまう(うずくまってしまう)ことは珍しくありません。
シニア期に入ったインコには、24℃~28℃という少し高めの、かつ温度変化の少ないマイルドな環境を用意してあげましょう。冷房の風が少しでも当たるとすぐに体調を崩すため、ケージの置き場所には細心の注意が必要です。
換羽(トヤ)中のインコ
季節の変わり目などに羽が生え変わる「換羽期」は、新しい羽を作るために体力を消耗し、体温調節機能も不安定になります。また、イライラしやすくなったり、食欲が落ちたりすることもあります。この時期も通常より少し高めの温度(26℃~28℃)で管理し、体力の消耗を抑えてあげることが、スムーズな換羽を助けることにつながります。
病気療養中の鉄則
もし愛鳥が病気にかかっている場合は、夏であっても「保温」が治療の第一歩です。鳥は体温を上げることで免疫活性を高め、ウイルスや細菌と戦います。病鳥には30℃前後の保温が必要になることが多いため、エアコンの効いたリビングでの飼育は避け、別の部屋に移すか、サーモスタット付きの強力なヒーターとビニールカバーで厳重な温室を作る必要があります。
28度は危険?室温とケージ内温度

環境省が推奨する「クールビズの室温28℃」という言葉が浸透しているせいか、「インコも28℃なら大丈夫」と思い込んでいる飼い主さんは少なくありません。しかし、ここで大きな落とし穴となるのが、「エアコンの設定温度 ≠ 室温」であり、さらに「室温計の数値 ≠ ケージ内の温度」であるという事実です。
部屋の構造や空気の滞留によっては、エアコンのリモコンが28℃設定でも、実際の日当たりの良い場所では30℃を超えていることがあります。逆に、冷気は床に溜まる性質があるため、人間が立って生活している空間(床上1.5m)が28℃でも、床に近い場所(床上30cmなど)にケージを置いている場合、そこは24℃~25℃まで冷え込んでいる可能性があるのです。
特に危険なのが、メタルラックなどの棚にケージを置いているケースです。「通気性が良いから」と思いがちですが、壁際や部屋の隅に設置されたラックは空気が淀みやすく、熱がこもる「ホットスポット」になりがちです。また、窓際は直射日光による温室効果で、短時間で致死的な温度まで上昇するリスクがあります。
私が強くおすすめしたいのは、「ケージのすぐそば(できれば止まり木の高さ)」に設置した最高最低温湿度計でのモニタリングです。これにより、「私たちが寝ている間にどれくらい温度が下がったか」「昼間のピーク時に何度まで上がったか」を正確に把握することができます。
インコのサインを見逃さないで!
数値はあくまで目安です。最強の温度計は、愛鳥自身の行動です。
【暑いサイン】
・ワキを少し開けている(初期)
・口をパクパクさせている(中期)
・羽を細くして体をスリムに見せている
【寒いサイン】
・羽を膨らませてふっくらしている(まんじゅう状態)
・片足を羽の中にしまっている
・顔を背中の羽にうずめている
これらのサインが見られたら、温度計の数値に関わらず、即座に設定温度を見直してください。
エアコンなしの限界と熱中症リスク
「昔はエアコンなんてなかったし、自然の風で大丈夫では?」「電気代が気になるから、なるべくエアコンを使いたくない」という声もたまに耳にします。しかし、近年の日本の気候変動、特に「酷暑」と呼ばれるような異常気象において、セキセイインコをエアコンなしで夏越しさせることは、極めて危険な賭けであり、推奨できません。
気象庁のデータを見ても、日本の夏の平均気温は年々上昇傾向にあり、最高気温が35℃〜40℃に達する日も珍しくありません。セキセイインコの原産地であるオーストラリア内陸部は確かに乾燥して暑い地域ですが、彼らは暑い日中は木陰や水辺でじっとして過ごし、風に乗って涼しい場所へ移動することができます。しかし、閉鎖された日本の室内ケージでは、彼らは逃げ場を失い、蒸し風呂のような高温多湿環境に閉じ込められることになります。
扇風機を使えば涼しくなるのでは?と思うかもしれませんが、人間が扇風機を涼しく感じるのは、風が汗を蒸発させて気化熱を奪うからです。汗をかけないインコに温風を当てても、体温を下げる効果はほとんどありません。むしろ、熱風を浴びせ続けることで脱水を加速させる恐れすらあります。
また、窓を開けての換気には「脱走」と「外敵」という二重のリスクが伴います。網戸にしていても、賢いインコは鍵を開けたり網を食い破ったりすることがありますし、外からは野良猫、カラス、ヘビ、イタチなどが虎視眈々と狙っています。実際に「少し窓を開けていただけなのに、隙間からヘビが入ってきてインコが襲われた」という痛ましい事故も報告されています。
インコの小さな命を守る責任ある飼い主として、夏場のエアコンは「贅沢品」ではなく、水や餌と同じ「生命維持装置」であると認識してください。最近の省エネエアコンであれば、つけっぱなしにしても電気代はそれほど跳ね上がりません。愛鳥の命には代えられないコストだと割り切って、24時間稼働を基本にすることをおすすめします。
シーン別セキセイインコの夏の適温管理法
ここからは、夜間の就寝時や留守番中、万が一の停電時など、具体的なシチュエーションごとの対策について深掘りしていきましょう。日常のちょっとした工夫や事前の準備が、事故のリスクを劇的に減らすことにつながります。
夜や寝るときのエアコン常時稼働
夜になると太陽が沈み、外気温は下がりますが、現代の住宅(特にマンション)は気密性が高く、昼間に建物が蓄えた熱が夜になっても放出されずに室内にこもる傾向があります。いわゆる「熱帯夜」です。そのため、基本的には夜間もエアコンはつけっぱなし(24時間稼働)が最も安全な選択肢となります。
ただし、昼間と同じ設定温度のままだと、明け方の気温低下に伴って室温が下がりすぎ、インコが寒がってしまうことがあります。インコは寝ている間、代謝を下げて体力を温存するため、活動時よりも体温がわずかに下がります。この状態で冷えすぎると体調を崩す原因になります。
夜間の設定テクニック
私は就寝前に、エアコンの設定温度を昼間よりも1℃~2℃高め(例えば29℃~30℃)に変更しています。また、風量は「自動」か「微風」にし、静かな環境を作ります。タイマーで数時間後に切れる設定にするのは、切れた後に急激に室温が上昇して蒸し風呂状態になるリスクがあるため、あまりおすすめしません。
おやすみカバーの落とし穴
セキセイインコの規則正しい生活リズムを守るために「おやすみカバー」は必須アイテムですが、夏場の使用には注意が必要です。遮光性の高い厚手のカバーや、冬用の裏起毛カバーをそのまま使うと、ケージ内の通気性が遮断され、内部に熱気がこもってしまいます。朝カバーを開けたら、中でインコが熱中症でぐったりしていた……という悲劇は絶対に避けなければなりません。
夏場は以下のような対策を講じましょう。
- 夏専用のカバーを用意する:通気性の良いコットン素材や、遮光性を保ちつつ風を通すメッシュ素材のカバーが市販されています。
- 隙間を作る:カバーの前面や側面の一部を開けておき、空気の通り道を確保します。部屋を暗くすれば、多少の隙間があってもインコは眠ってくれます。
- 温度計を中に入れる:カバーの内側にセンサーがあるタイプの温湿度計を設置し、内部が異常な高温になっていないかチェックできるようにします。
夏の留守番時の温度管理と注意点

仕事や買い物、急な外出で家を空ける「留守番」の時間は、飼い主の目が届かないため、夏場において最もリスクが高い時間帯と言えます。この不安を解消するために現代の飼い主が導入すべき最強のツールが、「スマートホームデバイス(スマートリモコン)」です。
「SwitchBot(スイッチボット)」や「Nature Remo(ネイチャーリモ)」といった製品を使えば、外出先からスマートフォンのアプリで自宅の現在の室温・湿度をリアルタイムで確認できます。さらに、「室温が29℃を超えたらエアコンを冷房モードでONにする」「湿度が65%を超えたら除湿モードにする」といった自動制御(オートメーション)を組むことも可能です。
私自身、外出中に「今日は予想外に暑くなったな」とアプリを見て気づき、遠隔操作でエアコンの設定温度を下げたことが何度もあります。この「繋がっている安心感」は、精神衛生上も非常に大きいです。
留守番中の「食」と「水」の腐敗対策
高温環境下では、食べ物や水が驚くほどの速さで痛みます。腐敗した水や餌を口にしたインコが、食中毒による下痢(そのう炎など)を起こし、脱水症状で弱ったところに熱中症が追い打ちをかける……という負の連鎖は非常に危険です。
留守番時は以下のルールを徹底しましょう。
- 生鮮食品は与えない
野菜、果物、エッグフード、ふやかしたペレットなどは数時間で腐敗します。留守番中はこれらを与えず、乾燥したシードやペレットのみにしてください。 - 水への配慮
水入れはフンが入らないような位置に設置するか、汚れにくい「バナナ型水入れ」や「ボトル給水器」を併用します。また、飲み水に混ぜるタイプの抗菌サプリメントや、薄めたお酢(リンゴ酢など)を極少量垂らすことで、細菌の繁殖をある程度抑えることができます。
停電時の保冷剤活用と緊急冷却法

台風やゲリラ豪雨による停電、あるいはエアコン自体の故障。これらは予期せぬタイミングで発生します。電気が使えなくなった瞬間、室温は上昇を始めます。そんな緊急事態に備えて、アナログな冷却手段を準備しておくことは、飼い主の義務とも言えます。
私が必ず実践しているのは、「冷凍庫に常に保冷剤と水を入れたペットボトルを常備しておくこと」です。これらがあれば、電気がなくても数時間はインコの周りを冷やすことができます。
簡易クーラーの作り方
- 凍らせたペットボトルや保冷剤を、タオルや手ぬぐいでしっかりと巻きます(結露した水滴が垂れないようにするため)。
- それをケージの「天井(上部)」に乗せます。
- 冷たい空気は重いため、上から下へと降りていき、ケージ内に自然な冷気の流れを作ります。
- もし可能なら、発泡スチロールの板などでケージの側面を囲うと、冷気を逃さず保冷効果が高まります。
【重要】保冷剤の中毒事故に注意
柔らかいジェルタイプの保冷剤に含まれる「エチレングリコール」などの成分は、インコにとって猛毒です。インコが興味を持ってかじり、中身を誤飲すると中毒死する危険性があります。
保冷剤を使用する際は、絶対にインコのクチバシや爪が届かない位置(ケージの外側)に設置し、タオルで厳重にガードすることを徹底してください。
冷房で寒がる時のヒーター活用
「夏なのにヒーター?」と思われるかもしれませんが、エアコン管理をする夏こそ、ペットヒーターが活躍する場面があります。例えば、多頭飼いをしていて「暑がりの子」と「寒がりの子」がいる場合や、人間と同じリビングで過ごしていて、人間にとっては適温でもインコには少し寒い場合などです。
こうした場合、部屋全体の設定温度は「暑がりの子(または人間)」に合わせて少し低めに設定し、寒がりの子のケージには部分的にヒーターを設置して「暖かい避難場所」を作ってあげるという方法(ゾーニング)が有効です。
具体的には、20W~40W程度の保温電球やパネルヒーターをケージの片隅に設置します。こうすることで、ケージ内に「涼しい場所」と「暖かい場所」の両方ができ、インコ自身が快適な場所を選んで移動できるようになります。自律的な体温調節を促すこの方法は、健康な成鳥にとっても非常に良い環境と言えます。
ただし、ヒーターを使う際はサーモスタットを併用し、設定温度を超えたら自動で切れるようにしておかないと、今度は温めすぎて熱中症になるリスクがあるので注意が必要です。
熱中症の症状と緊急時の処置

どんなに万全の対策をしていても、機器のトラブルや不測の事態で熱中症が起こる可能性はゼロではありません。熱中症は進行が早く、処置が遅れると脳や内臓に不可逆的なダメージを残し、死に至ります。早期発見と正しい応急処置が生死を分けます。
熱中症の進行レベルとサイン
| 危険度 | インコの行動・症状 | 飼い主のアクション |
|---|---|---|
| 注意 | 翼を体から浮かせてワキの下を見せている(放熱行動) 口をパクパクと開閉している(音はしない) 動きが少し鈍くなる | 室温設定を1~2℃下げる。扇風機などで空気を循環させる。新鮮な水を与える。 |
| 警告 | 口を開けて「ハァハァ」と音を立てて荒い呼吸をする(パンティング) 羽毛を体にピタッと密着させて細く見える 止まり木でジッとして動かない | 即時冷却開始。涼しい部屋(24~25℃)へ移動。濡らして固く絞ったタオルで体を優しく包むか、霧吹きで少量の水をかける。 |
| 危険 | 止まり木に止まれずケージの床に落ちる・うずくまる 目がうつろになる、意識がない 痙攣(けいれん)を起こす、羽をバタつかせる | 緊急事態!体を冷やしながら、直ちに動物病院へ連絡・搬送する。移動中も保冷剤(タオル巻き)でキャリーを冷やすこと。 |
応急処置のポイント:急冷は厳禁!
熱中症のインコを助けたい一心で、氷水を直接かけたり、冷房の強風を当てたりするのは逆効果です。急激な温度変化はショック状態を引き起こし、心停止を招く恐れがあります。「常温より少し冷たい水」や「濡れタオル」を使って、気化熱を利用しながら徐々に体温を下げていくのが正解です。
また、意識があり飲み込める状態であれば、常温の水や、もしあれば小鳥用の「経口補水液(または薄めたスポーツドリンク)」をクチバシの横から一滴ずつ垂らして飲ませます。無理に流し込むと気管に入って誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)になるので、慎重に行ってください。
なお、環境省の熱中症予防情報サイトなどでは、人間向けの対策として暑さ指数(WBGT)の活用が推奨されていますが、ペットの飼育環境においても、温度だけでなく湿度や輻射熱を考慮した総合的な管理が重要である点は共通しています(出典:環境省『熱中症予防情報サイト』)。
回復しても病院へ
応急処置で呼吸が落ち着き、元気を取り戻したように見えても、内臓(特に腎臓や脳)に深刻なダメージが残っている可能性があります。数日後に急変することもあるため、自己判断せず、必ずかかりつけの獣医師の診察を受けてください。
夏のセキセイインコの適温管理まとめ
セキセイインコと夏を安全に過ごすためのポイントは、教科書通りの「28℃」という数字を盲目的に守ることではなく、目の前にいる愛鳥の様子を見ながら、環境を柔軟にコントロールすることです。
最後に、今回の記事で特にお伝えしたかった重要ポイントをおさらいしましょう。
- 基本の適温は20℃~28℃だが、湿度は50%~60%を維持しないと意味がない
- エアコンは「直風」を避け、サーキュレーターで空気を回す。24時間稼働が基本
- 雛・老鳥・病鳥は、夏であっても保温が必要なケースが多い
- 留守番中はスマートリモコンでの遠隔監視、停電時は保冷剤による物理冷却でリスクヘッジ
- 室温計の数字は目安。愛鳥の「ワキ」の開き具合と「呼吸」こそが、最も正確な温度計である
夏はインコにとって過酷な季節ですが、飼い主さんが正しい知識と準備を持っていれば、決して怖い季節ではありません。しっかりと対策をして、愛鳥と一緒に元気で快適な夏を過ごしてくださいね!この記事が、あなたと愛鳥の健やかな毎日の助けになれば、これほど嬉しいことはありません。
※本記事の情報は一般的な飼育の目安です。個体の健康状態、年齢、飼育環境(ケージの大きさや置き場所)によって適切な対応は異なりますので、最終的な判断や治療に関しては、必ず専門家(鳥を診られる獣医師)にご相談されることをおすすめします。
