アパートや集合住宅でインコと暮らしていると、愛鳥の元気な呼び鳴きが近所迷惑になっていないか、いつか苦情が来るんじゃないかとヒヤヒヤしてしまいますよね。私自身もその一人でした。
ネットで調べると「無視すればいい」とか「防音カーテンで解決」といった情報が出てきますが、実際のところ、それだけで対策するのはかなり難しいのが現実です。この記事では、私が実際に試行錯誤して学んだ、飼い主と愛鳥が無理なく共存するための正しい知識と、具体的な環境作りについてお話しします。
記事のポイント
- 呼び鳴きを無視することが逆効果になる理由
- 防音カーテンや吸音材の本当の効果と限界
- 賃貸でも導入できるアクリルケースの実力
- 今日から始められる具体的な騒音対策の手順
根本からインコがうるさい時の対処法を学ぶ

「どうしてこんなに叫ぶの?」と悩む前に、まずはインコという生き物の性質と、私たちが暮らす環境のミスマッチについて知ることから始めましょう。ここでは、単なる精神論ではなく、行動学や音の性質に基づいたアプローチを解説していきます。
アパートや集合住宅での近所迷惑と苦情
まず直視しなければならないのは、日本の一般的な集合住宅の防音性能と、インコの声量の「圧倒的な差」です。私たち人間が普段会話する声の大きさはおよそ60デシベル(dB)程度ですが、インコ類の本気の呼び鳴きは桁違いです。例えば、小型のセキセイインコでも集まれば騒々しくなりますし、中型のコザクラインコやウロコインコになると、その鳴き声は80dBから時には100dBを超えます。これは、地下鉄の車内や、すぐ側でピアノを演奏されているのと同レベルの騒音です。
音の性質として、インコの鳴き声のような「高音域」は、直線的に突き抜ける力が強く、サッシのわずかな隙間や通気口、換気扇のダクトを通じて外部へ漏れ出しやすいという特徴があります。「ペット可」のマンションであっても、それはあくまで「飼育が許可されている」だけであり、「騒音を出して良い」わけではありません。
受忍限度と法的リスク
騒音問題には「受忍限度(社会通念上、我慢すべき限度)」という考え方がありますが、連日の早朝からの絶叫はこれを逸脱していると判断されるリスクが高いです。最悪の場合、管理組合からの飼育停止勧告や、不法行為としての損害賠償請求に発展する可能性もゼロではありません。
ご近所トラブルを未然に防ぐためには、物理的な対策と同時に、人間関係の構築も非常に有効です。入居時やエレベーターで会った際に「インコを飼っておりまして、うるさくならないよう気をつけていますが、もしご迷惑なら仰ってください」と一言挨拶をしておくだけで、相手の心象は劇的に変わります。「得体の知れない騒音」から「あの家のインコちゃんの声」に変わるだけで、許容範囲が広がることは心理学的にも知られています。
呼び鳴きを無視するしつけは逆効果?

インターネットや飼育書で最も目にするアドバイスが「呼び鳴きは無視しましょう」というものです。理論的には正しいのですが、これを実践するのはプロのトレーナーでもない限り非常に困難であり、中途半端に行うと事態を悪化させる危険性があります。
行動分析学の観点から解説すると、これまで「鳴けば飼い主が来てくれた」という成功体験を持っている鳥に対し、急に無視を始めると、鳥は「あれ? 聞こえてないのかな?」と考え、一時的に声のボリュームを上げたり、より激しく鳴き叫んだりします。これを「消去バースト(消去爆発)」と呼びます。
多くの飼い主さんは、この爆発的な絶叫に耐えきれず、つい「うるさい!」と声をかけたり、部屋に戻って様子を見たりしてしまいます。これが最悪の対応です。鳥にとっては「普段通り鳴いてもダメだったけど、死ぬ気で絶叫したら飼い主が反応してくれた!」という強烈な成功体験(報酬)となり、以前よりも執拗に、より大きな声で鳴く行動が強化されてしまうのです。これを専門用語で「間欠強化」といい、ギャンブル依存症と同じ原理で、行動が極めて消去されにくくなってしまいます。
正しい対応:分化強化のアプローチ
ただ無視するのではなく、「望ましい行動」を強化しましょう。
1. 合図を決める:部屋を出る時は必ず「行ってくるね」と声をかけ、「姿が見えなくなること」を予測可能にする。
2. 静寂を褒める:絶叫が止まり、一瞬でも静かになったタイミング(0.5秒でもOK)ですかさず「いい子だね」と声をかける。
これにより、「叫ぶこと」ではなく「静かにすること」が飼い主を呼ぶスイッチだと学習させていくのです。
ストレス解消のおもちゃで対策する

インコが叫ぶ大きな原因の一つに「退屈」と「エネルギーの余りすぎ」があります。野生のインコは、1日の活動時間の大部分を餌探し(フォージング)や移動飛行に費やしています。しかし、飼育下では餌箱にたっぷりのシードが入っており、わずか数分で食事という「仕事」が終わってしまいます。残った膨大な暇な時間と余った体力が、呼び鳴きや毛引きといった問題行動へと転化されるのです。
この「暇」を埋めるために効果的なのが、フォージング(採食行動)の導入です。餌をあえて食べにくくし、探させる工夫をすることで、鳥の知的欲求を満たし、心地よい疲労感を与えます。
| レベル | 素材 | 作り方と効果 |
|---|---|---|
| 初級 | トイレットペーパーの芯 | 芯の中におやつと紙屑を入れ、両端を内側に折り込んで封をします。嘴を使って破壊しないと中身が出ないため、破壊衝動と食欲を同時に満たせます。 |
| 中級 | お弁当用の紙カップ | シードを紙カップで包み、キャンディのように両端を捻ります。足で押さえながら紙を破く動作が必要で、器用さを養います。 |
| 上級 | ガチャガチャのカプセル | プラスチックのカプセルにドリルで数箇所穴を開け、中にシードを入れます。床で転がすと穴から少しずつ餌が出てくる仕組みで、長時間遊べます。 |
動物には「何もしないで食事を得るよりも、何らかの労力を払って食事を得る方を好む」という「コントラフリーローディング」という性質があります。可哀想と思わず、ぜひ彼らに「仕事」を与えてあげてください。夢中で作業している間は、驚くほど静かになりますよ。
夜や朝のカバー掛けと生活リズム
「朝の呼び鳴きが早すぎて近所迷惑になる」という悩みも深刻です。インコは光に非常に敏感な生き物で、わずかな朝日でさえも「朝だ! 活動開始だ! 群れの仲間に挨拶しなきゃ!」というスイッチを入れてしまいます。
これを防ぐためには、物理的に光を遮断することが最優先です。薄手の布ではなく、内側が黒くなっている「1級遮光」レベルのおやすみカバーを使用しましょう。ダンボールでケージを覆うのも遮光性と若干の吸音性があり有効です。
また、生活リズムの乱れは、呼び鳴きだけでなく、発情過多による攻撃性の増加にも繋がります。
- 毎日同じ時間に起こし、同じ時間に寝かせる。
- 発情期や呼び鳴きがひどい時期は、睡眠時間を長め(12時間〜14時間)に確保する。
これらを徹底するだけで、ホルモンバランスが整い、精神的に落ち着くケースは非常に多いです。不規則な生活は鳥にとって大きなストレスであり、そのストレスが「呼び鳴き」というSOSとして現れている可能性を常に疑ってみてください。
防音カーテンは意味ない?効果の限界

騒音対策として真っ先に思いつく「防音カーテン」ですが、過度な期待は禁物です。結論から言うと、インコの鳴き声のような大音量に対して、カーテン単体での防音効果は「ほぼ無い」等しいと考えてください。
音響工学には「質量則」という法則があります。これは「壁の重量(面密度)が重ければ重いほど、音を遮る能力が高まる」というものです。コンクリートや厚い石膏ボードに比べて、布であるカーテンは圧倒的に軽く、質量が足りません。特にインコの高音域はエネルギーが強く、カーテンの隙間や生地自体を容易に透過してしまいます。
それでもカーテンを使う意味
防音カーテンに意味がないわけではありません。「窓ガラスに音が反射して部屋中に響き渡るのを防ぐ(吸音効果)」や「外の人影や車のライトを遮断して、鳥を驚かせない(遮光・目隠し効果)」という点では非常に優秀です。あくまで「音を漏らさないための壁」ではなく「環境を落ち着かせるための補助グッズ」として割り切りましょう。
防音でインコがうるさい時の対処法を実践
しつけや環境エンリッチメントは、鳥との信頼関係を築く上で欠かせない根本治療ですが、効果が現れるまでには数週間から数ヶ月の時間を要します。「明日にも苦情が来るかもしれない」という切迫した状況では、即効性のある物理的な防音対策(ハードウェアの強化)が不可欠です。
防音室の自作は費用と手間がかかる
もしあなたが持ち家に住んでいて、DIYのスキルと十分な予算があるなら、自作の「防音室」を作るのが最強の解決策です。単に板で囲うのではなく、プロのスタジオ施工と同じ「浮き床構造(防振)」と「多重壁」の理論を取り入れることで、劇的な効果が得られます。
本格的な自作防音室の構成例
- 遮音材:石膏ボード(12.5mm厚以上)を2枚重ねて張ることで質量を稼ぎます。
- 吸音材:壁の内部にグラスウールを充填し、太鼓現象(共鳴)を防ぎます。
- 換気システム:密閉空間となるため、防音タイプの換気扇(三菱電機「ロスナイ」など)の設置が必須です。
しかし、これを実現するには材料費だけで10万円以上、重量も数百キロになるため、賃貸物件では床の耐荷重や原状回復の観点から現実的ではありません。「安く済ませよう」としてベニヤ板とスポンジだけで箱を作っても、隙間から音が漏れ、夏場は蒸し風呂となって愛鳥の命に関わる危険な箱が出来上がるだけです。生半可な知識での自作は推奨できません。
賃貸でも安心な吸音材と防音グッズ
Amazonなどでよく見かける、凹凸のあるウレタン製の「吸音材」。これを壁一面に貼れば防音になると誤解されている方が多いですが、これも注意が必要です。
「吸音」と「遮音」の違い
吸音材(スポンジ・ウレタン):音の反響を減らすもの。部屋の中は静かになるが、外への音漏れは止まらない。
遮音材(ゴムマット・石膏ボード):音を跳ね返すもの。重さが必要で、外への音漏れを防ぐ。
隣の部屋への音漏れを防ぐには「遮音材」が必要ですが、遮音材は非常に重く、壁に貼るのが困難です。賃貸でできる現実的な対策としては、「家具による防音壁(サンドイッチ工法)」が有効です。
インコのケージを置いている部屋と隣家の間の壁に、背の高い本棚やタンスを隙間なく並べ、中に本や衣類をぎっしりと詰め込みます。紙の束や布は優れた吸音・遮音体となり、壁の厚みが増したのと同じような効果が得られます。家具と天井の隙間もダンボールなどで埋めることで、さらに効果が高まります。これなら壁を傷つけず、0円で対策が可能です。
アクリルケースの効果とケージの防音

大掛かりな防音室は無理だけど、確実な効果が欲しい。そんな多くの飼い主さんが辿り着く最適解が「アクリルケース」です。ケージ全体を厚みのあるアクリル板で覆うことで、音を物理的に封じ込める方法です。
その効果は絶大です。板の厚さにもよりますが、適切に設置されたアクリルケースは、インコの鋭い鳴き声を20dB〜30dBほど減衰させることができます。これは、「地下鉄の騒音(80dB)」が「静かな事務所や日常会話(50dB〜60dB)」レベルまで下がるイメージです。壁一枚隔てた隣の部屋では、耳を澄ませば聞こえる程度まで軽減されるでしょう。
防音以外のメリットも見逃せません。
- 保温効果:冬場の暖房効率が上がり、電気代の節約になります。サーモスタットでの温度管理も容易になります。
- 脂粉・羽の飛散防止:インコ特有の細かい脂粉や抜け羽が部屋中に舞うのを防ぎ、アレルギー対策や掃除の時短になります。
このように、アクリルケースは「防音・保温・衛生」の一石三鳥のメリットがあり、初期投資はかかりますが、長い目で見れば非常にコストパフォーマンスの高いアイテムです。
おすすめのアクリルケースで騒音解決
アクリルケースなら何でも良いわけではありません。フィギュア用や薄いアクリル板では効果が薄いどころか、振動して逆に音が響いてしまうこともあります。防音目的で導入する場合は、以下の基準を満たす「鳥専用」またはオーダーメイドのものを選んでください。
失敗しない選び方のポイント
- 板の厚さ:最低でも5mm、できれば扉部分は5mm以上の厚みがあるもの。厚さは正義(質量則)です。
- 密閉性と換気:扉にパッキンやマグネットがあり隙間がないこと。一方で、側面には適切な空気穴(ロスナイを取り付けられる穴があればベスト)があること。
- メンテナンス性:毎日の掃除のために、扉が大きく開く、または分解が容易な構造であること。
「アクリルバードケージ」などのキーワードで検索すると、専門の工房がいくつか見つかります。決して安い買い物ではありませんが、ご近所トラブルの恐怖から解放され、愛鳥と笑顔で向き合える毎日は、お金には代えられない価値があります。
こちらの記事でも紹介しているのでぜひ確認してみてください・
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結論:インコがうるさい時の対処法はこれ

ここまで、行動学的なしつけから物理的な防音対策まで、多角的に解説してきました。結論として、インコの騒音問題に「これさえ貼ればOK」といった魔法のシールは存在しません。しかし、複数の対策を組み合わせることで、必ず解決の糸口は見つかります。
- ハードウェア(物理対策):まずはアクリルケース導入や家具の配置換えで、物理的に音量を下げ、近隣への配慮と飼い主の心の平穏を確保する。
- エンリッチメント(環境対策):フォージングや適切な放鳥で、鳥のエネルギーを健全に発散させ、叫ぶ動機を減らす。
- ソフトウェア(行動対策):呼び鳴きのメカニズムを理解し、正しい合図と褒めるしつけで、コミュニケーションの方法を修正していく。
これらをバランスよく実施することが、遠回りのようで最短の解決策です。防音対策は、愛鳥を閉じ込めるためではなく、愛鳥を守り、人間社会で共に幸せに暮らすための「愛のある投資」です。どうか諦めずに、できることから一つずつ試してみてくださいね。(出典:環境省『家庭動物等の飼養及び保管に関する基準』)